祝!ぶたぶた誕生20周年!著者の矢崎さんに質問!



著者の矢崎さんに質問!


見た目はかわいいぶたのぬいぐるみなのに、中身はとっても頼りになる中年男性。こんなユニークなキャラクターを、いつどんなきっかけで思いついたのですか?


当時、講談社の雑誌のショートショート企画のためにSSを2本書いて送ったのですが、どうも納得がいかず、〆切過ぎてから書いて送ったのがぶたぶたの第一作『初恋』です。自分のお気に入りのぬいぐるみが生きて動いたら、というだけの物語で、年齢をおじさんにしたのも、おじさんならば妻子もいるだろう、という設定もその時とっさに考えたものです。優しくていい人にしたのも「ギャップが面白い」とか「こうだったらかわいいよな~」という思いつきだけです。
そののち、雑誌に載った『初恋』を読んだ廣済堂出版の編集さんが「本にしませんか」と声をかけてくれました。短編をいくつか書いて、単行本『ぶたぶた』として発売されたのが、1998年9月のことでした。20年前のことです。


ぶたぶたのフルネームは「山崎ぶたぶた」ですが、名前の由来はなんでしょう?


①の答えのとおり、元々お気に入りのぬいぐるみ(モン・スイユのショコラ)がいて、それに「ぶたぶた」という名前をつけていました(つけたのは夫)。名字の「山崎」は、当時流行っていたとしまえんのCMに俳優の山崎努さんが出ていて、そのキャッチコピー「山崎はいい人だ」が元ネタです。「ぶたぶたはいい人だから、名字は山崎だろ」ってことで。


お答えになれる範囲で。ぶたぶたは、なぜ生命を持っているのでしょうか?
誕生の秘密をうかがえますか? また、歳を取るのでしょうか?


誕生の秘密は──話せません。というか、私も知りたい……。
歳はけっこうお話の中で取っているんです。軽く時間が20年くらい過ぎている話もあります。毛並みが毛羽立つ以外、見た目は変わらないようですよ。


ぶたぶたの作る料理はいつもとても美味しそうですが、あの数々のメニューは、
どんなところから発想しているのですか?


たいていは私が本当に食べておいしかったものを書いています。その時食べたいものとか、直近で食べたものとか、マイブームのものとか。真っ先に浮かぶものを書いているだけ、とも言えます。でも、その方がおいしく書ける気がします。
その半面、力を入れて書いたものよりその他のメニューが注目されたりもします。『ぶたぶたの甘いもの』などでは、いっしょうけんめい和菓子を書いたのに、なぜか焼きそばばかり「おいしそう」と言われたりとか。それはそれでうれしいのですけど。


ぶたぶたのキャラクターは、最初から全く変わっていないのですか?
たとえば、妻と二人の娘がいる(!)のは当初からの設定でしょうか?


ほとんど変わっていないと思います。細かいところが変わっている可能性はあると思うのですが、それは「変えた」のではなく、私が忘れているという可能性の方が高いです……。ただ、ぶたぶたに関しては①の答えのとおり、あまり細かい設定は最初からないのです。『初恋』ですでに奥さんと娘二人は登場していますし。これからも、ぶたぶたの存在や家族に対する細かい説明はしないと決めています。


この先、ぶたぶたにやってもらいたいと考えている仕事はありますか?
秘密でしょうけど、お答えになれる範囲で。


秘密というか、おおっぴらにしたとしても書けるかどうかが問題でして(涙)……。
「秘書」「街の電気屋さん」「旅行添乗員」など、書きたいものはたくさんあるのです。秘書は派遣とかならいろいろな会社で働けて面白いかもしれませんが、短編には向いていないかも、とも思います。「街の電気屋さん」は文字どおりなのですが、お客さんに偏りが出そう、というのが悩みどころです。「旅行添乗員」は私が出不精という致命的な問題が……。それから、念願のものとしては「名探偵」ですね。これはいつか本当にできるといいのですが──。


これも、差し支えのない範囲で。たくさんあるストーリーの中でも、
ご自分で(あの話は好きだな-)という作品を教えてください。


どの話も好きなのですが、最近のもので一番気に入っているのは『ぶたぶたラジオ』の中の「ずっと練習してたこと」です。タイトルになっている主人公の気持ちは、私がぶたぶたを書きながらずっと抱いている気持ちそのものだな、と思ったので。


ぶたぶたファンのみなさんに、ひと言お願いします。


20年間もの長い間、ぶたぶたシリーズを続けてこられたのは、ぶたぶたを愛してくださった読者の方々のおかげです。ありがとうございます。ぶたぶたも喜んでいることと思います。これからも光文社文庫のぶたぶたシリーズをよろしくお願いいたします。