【特集】衝撃に次ぐ衝撃が価値観を揺さぶる『リリース』。その魅力にクローズアップ!

単行本刊行時から文芸界で大きな話題を呼んだ長編小説『リリース』。
本作は第34回織田作之助賞を受賞すると共に、第30回三島由紀夫賞候補作にもノミネートされました。そののちに発表した「無限の玄」で第31回三島由紀夫賞を受賞、続く「風下の朱」は第159回芥川賞候補作に。そして、その2作が一冊となった『無限の玄/風下の朱』は第40回野間文芸新人賞候補となりました。
話題作を立て続けに描き、文学の力をまざまざと提示する古谷田さん。
そんな『リリース』と最注目の作家の魅力に迫ります。



『リリース』内容紹介




女性首相の指導の下、男女同権が実現し、同性愛者がマジョリティとなった国・オーセル。異性愛者の男子学生タキナミ・ボナは、パートナーの性別を問わず生殖を可能にしたスパーム(精子)バンクを占拠。凶行を目撃しようと集った群衆に向けて、国家が犯した重大な人権侵害を告発するための演説をぶつ。だが、“決定的な言葉”を口にしようとした時、共謀者のはずの友人オリオノ・エンダが放った銃弾にボナは倒れる。悲劇的に幕を閉じたテロ事件が投げかけた波紋は、無数の人々の運命を変えていく――。




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主要登場人物紹介

タキナミ・ボナ
異性愛者でありながら徹底的に同性愛者を演じる男子大学生。国家による重大犯罪の被害者であることを、スパームバンク占拠というテロ行為を通じて告発しようとする。


オリオノ・エンダ
生来、異性を好む男性。田舎で平穏な日々を送っていたが、実父の招来により都会へ。オーセルに相応しい同性愛者であることを強要される。そして進学先の大学でボナに出会う。


ユキサダ・ビイ
屈強な体格の青年・ミチカと交際する十七歳の高校生。ボナとエンダが起こした出来事に深く衝撃を受け、自分の中に巣食う感情に気付く。


刊行時に寄せられた反響に次ぐ反響!


「マイノリティーという理不尽な立場への想像力を駆使した随所に見られる力作だ」
小谷真理、『北國新聞 2016年11月19日朝刊』

「この小説がリリースしているのは、性を抑圧されることに怒りをおぼえている一人ひとりの人間の声だ」
石井千湖、『小説新潮 2017年1月号』

「突きつけられる問いは重いが、考え抜かれた末の言葉で構築されたこの小説を体験しない手はない」
北村浩子、『本の雑誌 2017年1月号』

「単なる男女逆転の思考実験に留まらない、マイノリティに対する深い思索に裏打ちされたディストピア小説だ」
香月祥宏、『SFマガジン 2017年2月号』

「目指すべきは、ジェンダーに囚われないということさえも超えた、個を個として愛することだという声明が解き放たれる」
三浦天紗子、『サンデー毎日 2016年12月11日号』

「古谷田奈月という作家が立ち向かっているものは、人間社会を存続させてきた制度とそこからの「解放」なのだ」
栗原裕一郎、文庫巻末解説


古谷田奈月氏プロフィール

1981年千葉県生まれ。2013年「今年の贈り物」で第25回日本ファンタジーノベル大賞を受賞。同作を『星の民のクリスマス』と改題し、デビュー。『リリース』で第34回織田作之助賞、「無限の玄」(『無限の玄/風下の朱』所収)で第31回三島由紀夫賞を受賞。その他の著書に『ジュンのための6つの小曲』『望むのは』がある。


作品一覧

『星の民のクリスマス』(新潮社)


小説家のひとり娘が突然消えてしまった。彼女の居場所は父親が描いた童話の中!? 古谷田さんのデビュー作となった第25回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。


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『ジュンのための6つの小曲』(新潮文庫nex)


自分の中にある音に素直であるがゆえにアホジュンと周囲から揶揄されるジュン。だが、同級生のトクと”エイプリル”との出会いが日々を変える。
美しい旋律が高らかに響く青春小説。。


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『望むのは』(新潮社)


小春の隣家に越してきた同い年の歩くんはバレエダンサーで、母親はゴリラ。ちょっぴり不思議な日常のなかにある、少女の感情と成長を柔らかく繊細な筆致で描く長編。


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『無限の玄/風下の朱』(筑摩書房)


旅回りのミュージシャン一家の父親が死んだ。しかし、彼は当然のように蘇る。(「無限の玄」)その女たちは「魂の健康」を賭けて、野球に打ち込む日々を送っていたが……。(「風下の朱」)
著者の才気がほとばしる中編集。



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