第6回募集テーマ「図書館」入選作公開しました!



第6回募集テーマ「図書館」入選作公開

先々週発表した入選作3作のうち、1作を公開いたします。



「司書になった日」  坂入慎一 NEW



「めくる」  恵誕



「未完図書館」  滝沢朱音



第6回募集テーマ「図書館」優秀作講評


「夜に誘われて」 恵誕

深夜にひっそりと開いているプライベート図書館と運営者の美女。主人公はすっかり気に入って毎夜のように足を運ぶが、ある夜、客の一人が奥の部屋へと招かれているのに気づき――。幻想的で謎めいた雰囲気とコミカルなラストとの対比が見事でした。ただ、オチにつながる伏線が弱いので、少し加筆が必要でしょう。

「めくる」 恵誕

同じ作者による作品で、やはり舞台は深夜もやっているブックカフェですが、こちらの主役は本そのもの。主人公の「僕」がまるで生きているかのような一冊の本の虜になっていく官能的なくだりは、本好きの共感を呼ぶでしょう。そして、こちらもパンチの利いたラストが待っています。

「図書館の幽霊」  田辺ふみ

図書館で少年の前に現れた女性の幽霊。「自分でページをめくれないので代わりにめくってほしい」と言う。だが、そこには別の目的があって……。面白い設定ですが、ワンアイデアだけで終わらせてしまうのではなく、ここからさらに話を転がしたいところです。また、翌日には、少年が彼女の存在を忘れているとした方がよいのではないでしょうか。

「初恋」   こぐまゆり

図書館に毎日のようにやってくる男性に密かな恋心を抱く「私」。瑞々しくしっとりした語り口で、よくある設定ながら読ませる文章になっています。読み手が「私」の正体を推理する手がかりを、いくつかさりげなく作中にちりばめておくと、ラストでより納得できる読後感を得られるのではないでしょうか。

「――本末転倒じゃないの?」  汐力

一人の青年が図書館で開いた本から「本の精霊」が現れ、図書館にある本の主人公になる体験をプレゼントするという。小説好きなら誰もが憧れる夢をかなえるような話ですが、それだけに、具体的な作品名を挙げつつ展開してほしかったと思います。わくわくするようなイメージを目いっぱい拡げてこそ、その後の皮肉な展開がより利いてくるのではないでしょうか。

「塵芥の塔」  藤本直

文明崩壊後の世界。残存する書物を世界中から集める事業が、王の命令のもとに行われている。それらが収められていくのがバベルの塔を思わせる超巨大な図書館だという設定が魅力的で、世界観もしっかり構築されていて見事です。ただ、ショートショート向きの題材ではなく、ある程度の長さの中短編に発展させてまとめる方がよいのではないでしょうか。

「未完図書館」  滝沢朱音

著名な作家の世に知られていない未完の作品ばかりを収めた図書館という設定がユニーク。作家志望者である主人公にとっては、宝の山ともいえる魅力的な場所ですが、そこにある作品を利用して自分の作品に仕上げることは、禁断の果実を口にすることでもある。そんな作家の生みの苦しみが実に巧みに表現されています。

「いつか夜になりたい」  酒田紺

第四回「食卓」テーマで入選した著者。今回も二人の少女をめぐるささやかなエピソードが繊細な筆致で描かれています。何も起こらないのに引き込まれてしまうのは、著者の中で世界がしっかり構築されているからでしょう。書き手の才能を感じます。ですが、今回は「不思議」要素が弱く、ショートショートとしては未完成ではないかと思われました。

「図書館の怪談」 皆川まな

図書館の談話室で出会った三人がそれぞれ図書館に纏わる怪談を話し出すと、その三人目が――。図書館に出て来る幽霊の話や本自体が物の怪であるという話は多かったですが、その中では上手くまとめた作品だと思います。

「一冊の本」 香久山ゆみ

なぜか貸し出し人気が高い児童書の秘密と司書の恋心。展開は強引でありながらもさらりと読ませてラストではつい微笑んでしまいます。図書館で芽生える恋愛ものも今回多かったストーリーのひとつ。そんな中でワンアイデアが良かったと思います。

「図書館」 HAL

奇妙な世界の図書館に紛れ込んでしまったと語る友人。それは夢の話なのか、それとも――。ラストの切り方はうまく、雰囲気のある作品だと思いました。行間のスペースの開け方ですが、あまりやり過ぎない方がいいと思います。

「司書になった日」 坂入慎一

図書館なのに司書たちがライフルを持って鹿を狩りに行く――意表をついた設定、その世界観も魅力的でとてもそそられる。細かな突っ込みどころはあるし、この作品をショートショートと言っていいのかというとそこは微妙なところではありますが、上手い人だと思います。

「幸福部ひらめき課」 高井希

図書館を神様や天使、超人が管理するという設定も多く見られました。その中で、この作品は、地上にいる天才たちに「ひらめき」を与えるための天上の図書館というアイデアが綺麗にはまっていました。そこを管理する新人課員の奮闘ぶりもユーモラスに描かれていて楽しい。ラストは幸せなオチをもってきてもよかったのではないでしょうか。



その他、印象に残った作品は――

「眠れる森」(内雄一)/図書館は「文字の森」であるという表現が印象的。抒情的でこなれた文章から、書ける人だということが伝わってきます。ただ、ショートショートとしては、物語を推進させる「アイデア」がほしい。

「野菜図書館の茄子をかりて」(吉岡幸一)/書棚に野菜が並べられているだけの図書館という奇抜なアイデアがいいですね。ただ、それが説得力をもって読者に伝えられているかというと、うまくはまりきっていない印象があります。もう一工夫が必要です。

「百年後の図書館」(安藤和秋)/「危険図書」が何故危険かというラストのアイデアは面白かったですが、タイムマシンの使い方が安易過ぎるのではないでしょうか。もう少し読者に親切に書くことを心がけていただきたいです。



今回の入選作に選ばれたのは――

恵誕さんの「めくる」滝沢朱音さんの「未完図書館」坂入慎一さんの「司書になった日」です。おめでとうございます! この後、編集部よりご連絡を差し上げます。掲載は次週以降となります。







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