第8回募集テーマ「鍵」入選作公開! 第9回テーマも発表しています。


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第8回募集テーマ「鍵」入選作公開! 第9回テーマも発表しています。




「LOST」  山口波子 NEW


「ひみつのお団子」  恵誕

「コンストラクション・キー」  滝沢朱音



第8回募集テーマ「鍵」優秀作講評


「百万に一つの偶然?」 安藤和秋

泥棒に入られたマンションの部屋。玄関ドアには、万一の鍵の紛失時のために、十二桁の暗証番号を口にすることで開錠する音声認識の機能があったのだが……。ワンアイディアのオチ話ですが、微笑ましい結末が好印象でしたが、やはり小粒でしょうか。

「AIBIKEY」 小狐裕介

カップルがペアの鍵を一本ずつ持つことで、無数に存在する並行世界の一つに行けるというSF設定は面白かったです。ただ、主人公が実際に恋人と行った並行世界体験を具体的なエピソードとして盛り込むなど、物語としてのふくらみを出した方がよかったのではないでしょうか。

「鍵は心の閉まり」  家田智代

小さな田舎町で代々続く大きな質屋。さほどお客もないようだが、つぶれもせずに残っている秘密とは? 達者な書き手で今作も安定した話運びですが、これはショートショートではないですね。短編になるアイディアを入り口だけで終えている印象を受けます。連作短編などに発展させることを考えてみては、いかがでしょうか。

「ひみつのお団子」  恵誕

江戸で大人気の「甘とろ団子」。店主しか知らないその製法の秘密とは? さすが常連入選者で、今作もユニークなアイディアと展開で、とても面白く読みました。ただ、テーマである「鍵」要素が作中にうまくはまっていないのが残念。「決してのぞいてはいけない」部屋を開けるところに、なんらかの「鍵」を使う流れにするのがよかったのではないでしょうか。

「コンストラクション・キー」  滝沢朱音

仕事もプライベートもうまくいっていない不動産営業の青年は、あるパズルゲームにはまっていた。何度挑戦しても完成までたどり着けないゲームと終わりのない実りなき仕事の果てにあるものは――。建物の施工中に使われるコンストラクション・キー(知らない方は検索を)を作中に巧みに生かし、すべてが反転していく結末までの流れが見事でした。

「LOST」  山口波子

鍵を失くして部屋に入れなくなった女性に、やって来た鍵屋は「本人確認のため」と奇妙な質問をするのだが……。意外なラストに向けてうまくまとめられていると思います。畳みかけるようなスリリングな語り口もいい効果を生んでいます。ただ、読者に伝えるべき情報が伝えられずそのまま放り出されて終わってしまっている点がいくつかあり、やや不親切な印象が残りました。

「ロックオン」  あんどー春

同棲相手の男性が寝ている隙に、スマホのロックを外して友人たちとのSNSを確認すると、そこに別の女の影が……! とても分かりやすい設定と展開で、先へ先へと読ませる力があります。ただ、ラストのサプライズに向けた伏線の貼り方については、もう少し丁寧に見直した方がよいかもしれないですね。読者に不誠実ではなく、でもきれいに騙すには?という点から見直しをされるとよいと思います。

「穏やかな幸福」  松本エムザ

人体に小さな鍵穴を作り、そこにキーを差し込むことで感情をコントロールできる技術が開発された未来社会。上流階級では当たり前のことになっているが、手術には大金が必要。フェイクの鍵穴を開けた主人公の運命は――。ストーリー展開は非常に巧みですが、「感情をコントロールできるようになる手術」にそこまで価値を見出すかという前提条件の部分で、評価が分かれそうです。

「不運の回想」  藤本 直

ベランダで洗濯物を干す主婦の内面描写から始まる導入部。平凡な日常ですが、何かが起こりそうな予感が巧みに盛り込まれています。ただ、どんでん返しに向け、いくつかの伏線が張られているのですが、その手つきがぎごちない印象でした。あまり注意深い読者でなくても一読して分かるよう、もう少し記述を補う必要があるのではないでしょうか。この内容だと、回想場面も含め、もっと長い作品になってもよいと思います。

「カゾクのひみつ」  梨子田歩未

人にはそれぞれ秘密があり、それを内包しているのは「家」である。そしてその「家」は小さな鍵と鍵穴をあちこちに出現させて、家族それぞれの秘密を暴露していく……。微笑ましいのかグロテスクなのか――奇想天外な話ですが、最後まで読ませてしまう力がある作品でした。ただ、家がなぜ家族の秘密の暴露をし続けたのか、その動機に説得力を持たせるべきではないでしょうか。



その他、印象に残った作品は――

「合鍵を持っているなら」(笹餅いろは)/主人公の女性が部屋に帰ると、合鍵を持っているもう一人の自分が待っていたという導入部は魅力的ですが、ラストはもっともっと面白くできたはず。

「愛鍵プロジェクト」(浅月庵)/理想的な愛称を持ったパートナーを見つけるための鍵を一人一人が持ちながら成長するという発想はユニーク。ですが、オチは、今の時代では古い感覚のものとされてしまうでしょう。

「鍵」(HAL)/脳の中に埋もれている潜在意識を活性化させる鍵。先行作のあるアイディアですが、導入部が巧みですね。ただ、活性化された脳が実現することはもっと凄い内容にしていただきたかった。またラストが弱いのが残念でした。

「香水瓶」(阿瀬みち)/古い見覚えのない鍵を見つけたことから、封印されていた記憶がよみがえっていく。文章にまだこなれないところが散見されますが、ラストの救いに心温まりました。

「まごころの金庫」(ひなた)/開かずの金庫の開錠をめぐる女中の独白で構成されているのですが、語り口が巧いですね。ただ、タイトルにもある「まごころ」の意味と結末がわかりにくく、読み手に伝えるということをより意識していただきたいです。



そして、今回の入選作は――

滝沢朱音さんの「コンストラクション・キー」山口波子さんの「LOST」に決定いたしました。おめでとうございます! 掲載までに少し手を入れていただく必要があるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。詳しくは、ご相談させてください。また、恵誕さんの「ひみつのお団子」も、鍵の部分を加筆できるようでしたら、ぜひ挑戦していただきたいと思います。




第9回募集テーマ《遺言》

第9回「遺言」テーマの募集は締切となりました。



募集詳細

文字数
400字以上6000字以内

テーマ
「遺言」
必ずしも、作中で「遺言」という言葉を使う必要はありません。テーマはモチーフとしてお考えください。

締 切
2019年11月8日(金)23:59:59まで(これ以降もテーマを変えて、随時、募集いたします)

応募規定
未発表の日本語作品に限ります。必ず以下の「応募フォーム」からお送りください。他作品からの盗用やアイデアの模倣は厳禁です。判明した場合には、入選発表後でも入選取り消しとなります。なお、審査、審査過程に関するお問い合わせには一切応じられません。

選 考
光文社文庫編集部

入選発表
入選作は本サイトにて発表して掲載。採用作には図書券3000円分を進呈します。※将来は書籍化も予定。
入選作の著作権は本人に帰属します。受賞作の複製権(出版権含む)、公衆送信権、および映像化、コミック化、舞台化等の二次的利用の権利は光文社に帰属します。


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